太陽光発電について調べ始めると、多くの人が同じ壁にぶつかります。今から設置して、本当に元は取れるのか。検索すれば、もう元は取れないという断定的な意見がいくつも並びます。その一方で、販売する側は経済的なメリットを強調します。この食い違いを、業界の内側にいる人間はどう見ているのでしょうか。
戸建て向けの太陽光発電と蓄電池を専門に扱う株式会社ECODA(エコダ)の代表取締役・平間一也氏の見解は、設備を売る立場としてはいささか意外なものでした。
儲からないという指摘を、事業者自身が否定しない
太陽光は儲からないと言われることについて、平間氏はその指摘のとおりだと率直に認めます。かつては売電収入によって得をすると語られてきたが、今はそういう商品ではない、という立場です。
そのうえで同氏が投げかけるのは、ひとつの素朴な問いです。もし本当に昔のほうが設置者にとって経済的に有利だったのなら、条件が悪化した現在、設置する人は激減しているはずではないか。ところが現実には、設置する家庭は減っていません。
つまり、太陽光を載せる目的そのものが、この十年ほどで入れ替わったということになります。
増やすための設備から、減らすための設備へ
平間氏によれば、今設置している人の多くは、大きく得をするために導入しているわけではありません。異常なほどに高騰した電気代によって損をする金額を、少しでも小さくするために導入している。家から出ていくお金を減らすための投資である、という説明です。
同氏はこの設備を、売電収入を生む投資商品ではなく、生活インフラのひとつとして捉えています。ガスも水も自宅で自給自足することはできませんが、電気だけはそれができる。届けているのはその選択肢である、という考え方です。
数字が語る、家計の疲弊
背景にあるのは電気料金の構造的な上昇です。同社の説明によれば、電気代は年平均でおよそ3.65パーセントのペースで上がり続けており、このまま推移すれば2050年度には現在の約2.46倍に達すると見込まれています。過去十年で四割から六割の値上がりはすでに現実のものとなりました。電気料金に上乗せされる再生可能エネルギー発電促進賦課金も、創設からの十四年でおよそ十九倍に膨らんでいます。
生活者の実感も、これを裏づけています。同社が2026年1月に持ち家で子どもと同居する30代から60代の既婚者510人に行った調査では、八割を超える人がこの冬の電気代が昨年より上昇したと回答しました。上昇幅として最も多かったのは一割から二割未満、金額にして月あたり1,300円から2,500円ほどの増加です。
さらに象徴的なのは、住まいのエネルギーに関する不安として最も多く挙がったのが、節電を頑張っても限界を感じるという回答だった点です。こまめな消灯や暖房の抑制といった努力を積み重ねてもなお、支出の増加を止められない。そうした行き詰まりが、設備そのものへの関心を押し上げているとみられます。
制度も、すでに売電を前提としていない
固定価格買取制度は十年間の買取価格を保証する仕組みですが、その水準は当初の数年で24円前後、その後は8円台へと下がります。平間氏は、そもそも売電を主目的に設置する人はもういないため、買取価格が下がっても今の検討者は気にしないと語ります。
買取期間を終えた、いわゆる卒FITの家庭についても、同氏の見立ては明快です。安く売るよりも、蓄電池や電気自動車を組み合わせて自家消費の割合をさらに高めるほうが合理的である、と。売る側の単価が下がり、買う側の単価が上がるという構図が続く限り、自家消費型が標準であり続けるという見方です。
蓄電池については、余った電気を売ってもプラスが小さい以上、基本的にはあったほうがよいという立場をとりつつ、電気の使用量が極端に少ない単身世帯であれば太陽光だけという選択もありうると、線引きも示しています。
それでも、すべての家に向くわけではない
誤解も根強く残っていると平間氏は指摘します。パネルの寿命は十年から二十年で交換が必要だ、十年ほどで発電量が半減する、裕福な家庭のための設備だ。いずれも現場の実感とは異なるといいます。実際の発電量はカタログの数値と大きくは変わらず、戸建てであればパネルの洗浄も基本的には不要。パワーコンディショナーの交換が二十年前後で発生する点と、住宅を解体する際に撤去費用が十数万円ほど上乗せされる点は、あらかじめ知っておくべき事実です。
そのうえで同氏は、導入して後悔した人と満足した人の差は、条件が合っていたかどうかに尽きると語ります。屋根の形状や日当たり、そして現在の電気料金。この条件が揃わないまま設置してしまえば不満は残り、揃っていれば電力会社から買い続けるより負担は軽くなりやすい。同社が、経済効果が見込めないと判断した家庭には提案自体を行わないという方針を掲げているのも、この線引きの延長線上にあります。
同社は戸建てを中心に累計3,000件を超える施工と、2,000件以上の補助金申請を手がけてきました。2024年の施工実績は年間1,800件にのぼります。
儲かるかどうかという問いの立て方は、すでに時代に合っていないのかもしれません。判断すべきなのは、増える収入ではなく、減らせる支出のほうです。新築の戸建てでは太陽光が標準設備になりつつある今、この設備は選ぶものから、当たり前に備わるものへと静かに位置を変えつつあります。
